コザ職人 Vol.2
師匠を持たずして世界に認められた技。
己の響きを追求して楽器の定石を変えた者。
等等… 沖縄市工芸産業振興会に在籍する、
コザの誇る至高、孤高の職人達をご紹介致します。
親川陶芸 唐白窯
独自の世界を産み出す唯一無二の技法
沖縄市の窯元「唐白窯」を拠点に活動する陶芸家・親川唐白さんは、15世紀に朝鮮で発達した三島手という技法に、黒い釉薬を併用した独自の技法「琉球花三島」を生み出した。
29歳で陶芸の道に入った親川さんは、「僕にしか出来ない焼き物を作りたい」という思いで、師匠を持たず独学で様々な手法を研究してきました。その中で自我の世界「銀河」を表現するために「琉球花三島」を開発し、その独自の技法を用いた「銀河シリーズ」は世界的に高く評価されています。パリやウィーンで国際的な賞も獲得し、2006年には「世界芸術家辞典」に掲載されました。また、2010年には、変花器「シリーズ『銀河』」が第63回創造展で文部科学大臣賞受賞に輝きました。
存在感のあるもの、そして晴れの日に使われる器を作りたいという思いで、動きや遠近感をイメージして作品を創り続けており、作品には繊細さと力強さが入り交じっています。三島手にとって重要な「印」も、デザインも含め全て親川さん自身が作っています。
表現したい独自のものを作るため、今なお研究の連続だそうです。常に新しい表現を行っている親川さんの今後の作品、器に出会うのが楽しみです。
親川陶芸 唐白窯
沖縄市山内1-1-18TEL:090-3796-4899
http://www.yachimun-touhaku.com別ウィンドウで開きます
うちな〜工芸
お客様に喜んでもらうことが一番の幸せ
「うちな〜工芸」の革細工職人・山城正嗣さんは、縁起の良いヘビ革を用いたフクロウのストラップや財布、キーホルダーなどの革工芸品を作っています。
この世界に入ったきっかけは10年前に仕事の縁で革作りをしている方と出会ったことだそうです。その方から革細工機材を一式譲り受けた山城さんは、それらを活かすため会社の休みの日に那覇の教室に通い、「技術があれば活かせる」という工芸に魅力を感じ、その1年後に16年間勤めていた会社を辞めて独立しました。
初めは、北谷町美浜で店を構え販売。そして、前職でのセールス経験を活かし営業を行い、今では40ヶ所に商品を卸しています。現在は、玉泉洞に店を構え、販売だけではなく革作り体験の指導も行っています。
一番の人気商品は、ヘビ革で作られている「金運ふくろう」です。ふくろうは、目先のきく鳥といわれ、勉強・仕事・商売繁盛するといわれています。また、ヘビ革は金運や幸運をひきつけるとも言われており、とても縁起がいい商品として贈り物としても喜ばれています。 作った作品を喜んでもらうことが一番の幸せであり、革作り体験では、自分の名前などの刻印が押せるので、自分だけのオリジナルの1点物を作っている人たちの楽しそうな光景を見ることも山城さんの楽しみの1つだそうです。
うちな〜工芸
住所:沖縄市桃原1-5-25TEL:098-932-8863
Glass studio 尋
自由な発想で、自在に生み出す琉球ガラス
沖縄市で唯一の琉球ガラス工房「Glass studio 尋」のオーナー作家 屋我平尋さんは、吹きガラスだけでなく、多彩な技術を駆使して自身の作品を創っています。
元々ステンドグラスの作品を創っていた屋我さんは、ステンドグラスの材料を作ろうと思い琉球ガラスの世界に入りました。読谷村の「宙吹ガラス工房 虹」で8年間修行した後、16年前に「Glass studio 尋」を設立しました。
従来の色ガラスを用いて作品を創るだけではなく、ガラスを溶かして別の色のガラスとかけあわせ、ここでしか作れない色を生み出しています。また、一方では、昔ながらに廃瓶を再利用した器等も作っています。
用いている技法も様々で、砕いたガラスを重ねて立体感を出すなど、自由な発想で屋我さんならではのガラスの世界を表現しています。
琉球ガラスの魅力を「ガラスは光を通すので、この光をどうコントロールするのかが楽しい」と話す屋我さんは、ガラスを曲げたりくもらせたり、ごつごつした物を作ってみたりと、今後も思うまま自由自在に作品を誕生させていくことでしょう。
Glass studio 尋
沖縄市知花5-24-20TEL:098-937-3445
宏次染工房
伝統=進化の集大成。今の沖縄を表す紅型
金城宏次さんは、地元沖縄市に工房をかまえ、500年続いてきた古典紅型の伝統を受け継ぎながらも、独自のデザインで新たな琉球紅型を制作しています。
県立芸術大学工芸専攻染めコースで、伝統の既存の模様を模写するだけではなく、ゼロから創造するという教えを受け、名渡山工芸館では古典柄の型染めを基礎から徹底して教わりました。その後独立し、2002年、ニューヨーク在住の県出身美術家・照屋勇賢さんが金城さんの技術を得て完成させた作品は、照屋さんの名前を世界にとどろかせた代表作の1つとなりました。と同時に金城さん自身の転機にもなり、以降、照屋勇賢さんと共に、現代アートと伝統工芸を融合させた紅型作品の共同制作をしています。また、金城さんが作成した「チューリップ・ポークランチョンミート」の壁掛けは、沖縄支店とデンマーク本社に飾られています。
そのポーク缶詰のパッケージの壁掛けや、コザの代名詞であるチャンブルー文化を表現した横文字を紅型に取り入れた作品など、コザで生まれ育った金城さんだからこそ生まれる独自の発想で、コザの風景を紅型で染めたシリーズを制作しています。
自らデザインも手がけ、染め物もする金城さんが「今の沖縄」を描く今後の琉球紅型作品が楽しみです。
存在感のあるもの、そして晴れの日に使われる器を作りたいという思いで、動きや遠近感をイメージして作品を創り続けており、作品には繊細さと力強さが入り交じっています。三島手にとって重要な「印」も、デザインも含め全て親川さん自身が作っています。
表現したい独自のものを作るため、今なお研究の連続だそうです。常に新しい表現を行っている親川さんの今後の作品、器に出会うのが楽しみです。
宏次染工房
住所:沖縄市胡屋4-26-23TEL:090-9402-0119
松田ギターチタン
純粋な音色の追求が従来の技術を凌駕した
国道329号線沿いにあるいかにも工場という建物、看板屋を営む松田祐信さんは自身の看板工場で「松田ギターチタン」を制作しています。「松田ギターチタン」とは、ギター本体の背面板に木ではなくチタンを使用したもので、チタンに変えることにより、音量を格段に向上させたギターです。
クラシックを中心に音楽鑑賞が好きな松田さんは、7年前に趣味でギターを始めたそうです。以前から、他の楽器に比べギターの音が悪いと感じていたそうで、自身が演奏するにあたり、従来のギターをいろいろ試しても満足できるものではありませんでした。そこで、ギターの材質に着目・研究し、ギター本体の背面板を木からチタンに変えることにより、音量を向上させることに成功しました。
さらに従来のギターの構造では前面板に70kgもの圧力がかかっていることにも注目し、その圧力を取り除き前面板を豊かに響かせる構造を開発し、それによって音質の向上も実現しました。この構造は「ギター表面板の振動促進構造」という名称で特許も取っています。
松田さんの良い音へのこだわりで生まれたこのギターの音色は素晴らしく、ギター好きであれば何時間弾いてても飽きないギターが誕生したのです。
松田ギターチタン
住所:沖縄市美里5-23-15TEL:098-929-3093
ギャラリー嬉楽
守り神たちを、より身近に擬人化
「嬉シーサー」「楽シーサー」といった表情豊かな擬人化されたシーサーを陶芸で制作している田中順子さん。田中さんの作品は、ご主人と営む沖縄市諸見里にある「ギャラリー喫茶嬉楽(きらく)」にて観ることができます。 沖縄市出身の田中さんは、元々東京で書道を行っていましたが、ある作品展で自分の作品(琉歌)の前に自作のシーサーを置きたいと思い、陶芸教室に通い始めました。しかし、本土の陶芸教室ではシーサーの作り方を習うことはできず、一通り器の作り方を習った後、自身で試行錯誤しシーサーを作り始めました。
「シーサーは遊び相手」という田中さんは、「もっとシーサーを身近な存在として感じて欲しい」という思いから、擬人化され表情や動きを持ったシーサーを作っています。さらに、モチーフは沖縄のものだけではなく、風神・雷神や、自身が解釈したその子供版、「風童・雷童」などもあります。いずれの作品にも、古くから擬人化されて崇められていたものを、親しみを込めてそばに置きたいという、田中さんならではのメルヘンや愛情がこもっています。
ギャラリー嬉楽
沖縄市諸見里3-46-21098-987-9009
※出典:コザソース vol.48(2014年2月発行)